意見・異見

決算分析で粉飾は発見できるか?

 

 企業の信用度やリスクの評価において、大部分が決算書の財務分析で占められ、その比重は高い。極論では企業活動の全ては決算書に集約されており、決算書の分析で経営内容・リスクの全てが分かるとする意見もある。

   しかし、経営に問題を抱える企業ほど会計の操作がされやすいとの実証研究がある。これら研究は、分析が必要なリスクの高い企業ほど決算書が粉飾されやすいことを示している。粉飾された決算書をどれほど分析しようと、真実は分からないという、決算書分析の限界を知らしめ、粉飾決算を見抜き真実の姿を見極めることが出来なければ、財務分析は無意味であることを示唆している。

 上場企業の有価証券報告書には、会計監査法人が作成した監査報告書が添付されている。監査報告書は「公正妥当と認められる会計基準による決算書である」と証明している。しかし、監査報告書は粉飾が発覚したすべての有価証券報告書にも添付されている。監査報告書を作成する会計監査法人は、企業の内部データも入手できる決算分析のプロである。よって、粉飾決算は決算分析のプロでも見抜けないことを意味する。

 公表データしか入手できない部外者(取引先)が、一般に知られている財務比率などの分析によって、粉飾決算を見分けるのは殆ど不可能と言わざるを得ない。発覚した多くの粉飾決算を見ても、財務比率では僅か数ポイントの違いでしかない事が多く、そこに異常性を見出し、リスクの存在を確認するのは至難の業である。更に財務分析によって決算書に異常値があることを見つけ出したとしても、その決算書に粉飾があると結論付けることはできない。なぜなら、粉飾決算とは決算数値と取引・事業・財務活動とのギャップであり、取引・事業・財務活動との比較・分析・検証なくして判断する事は困難な為である。

  決算書分析で分かるのは決算時点の財務内容と過去の財務内容、その増減・変化だけである。決算書分析によって企業の信用度やリスクの全てが分かるとする考え方は、間違いである。

2018/3/19  高市幸男

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