意見・異見

与信管理業務の発生、経済発展への貢献

 

18世紀半ばから19世紀初めにかけて欧米で興った産業革命は、企業の生産力・輸送力を飛躍的に拡大させ、大量生産・大量輸送・大量販売を実現させた。従来の狭い地域内での顔見知りとの少額取引から、遠方での広範囲、見知らぬ企業との大口取引へと拡大し、それが掛け売りや手形取引などの信用取引を発生させたのである。

 信用取引の発生・増加によって、売り主には販売から回収までの資金を立て替える「資金負担」とリスクを抱える「リスク負担」、販売先の身元・信用度を把握する「信用調査」、債権を管理し回収業務を確実に行うための「債権回収」という4つの業務「与信管理業務」が必要になった。

更にそれぞれの業務はそれを専門に行う事業として、資金負担は「金融業」、リスク負担は「保険業」、信用調査は「興信業」、債権回収は「回収代行業」「サービサー」「ファクタリング」などの産業を発展させたのである。

我が国の産業革命は欧米に遅れること約半世紀後の19世紀半ばに興った、欧米と同様、産業の発展と同時に銀行の設立や興信所の誕生など与信管理業務の発生が確認される。

企業の与信内容は企業それぞれ千差万別であり、自ずと与信管理業務も各企業が独自に工夫・創造してきた。関連する専門業者もそれぞれの専門分野で独自の発展を遂げてきた。このため与信管理業務を経営管理業務の一つとして統合・体系づけ、発展させる業種・企業は現れなかった。唯一、商社は社内で開発した与信管理の手法を公開 し、それが我が国の与信管理業務として浸透してきた。なお金融機関も自社にとって必要不可欠の仕事として与信管理業務を発達させてきたが、決算書の入手や情報入手環境などの特殊性から一般企業には浸透、普及し得なかった。

2018/3/12 高市幸男

意見・異見

inserted by FC2 system