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棚卸資産回転率の不思議

2019/2/18 高市幸男

 

 財務分析に於いて、総資本回転率、売上債権回転率、仕入債務回転率、棚卸資産回転率など、回転率を求める計算が多数存在し、その利用価値は万民が認めるところである。ここでは、棚卸資産回転率を取り上げ、2つの不思議を考える。

 

第一は、何故「率」なのか? 

「率」とは、百分率の「率」であると考えられる。百分率の意味及び計算は小学生の算数で

>百分率とは、全体を100としたときの割合のことです。単位にパーセント(記号:%)

>を使って表わします。

>計算方法は、百分率= 比べられる量÷ もとにする量 × 100 です。

と説明される。

 棚卸資産回転率の計算式は、「売上高÷棚卸資産」が一般的である。よって、100を乗じていない点で、全体を100とせず、単位に%を使っていないことから、「率」を使用するには違和感がある。

「売上高÷棚卸資産」の計算結果は、売上高が棚卸資産の何倍あるか、転じて年間売上高を基準として、棚卸資産が1年間に何回転したかを示す。よって「**倍」、または「**回転」の「数」を表しており、率「%」ではないのが明確である。

本来、「売上高÷棚卸資産」の計算結果は「(売上高)棚卸資産倍数」または「(売上高)棚卸資産回転数」と言うべきある。

 

第二は、分子が売上高で良いのか?

 前述では、計算式は「売上高÷棚卸資産」が一般的である、と説明した。多くの書籍・HPで説明され、財務分析に使用する企業・研究者も多数いることから使用したものであるが、本来の計算目的が「棚卸資産が1年間に何回転したかをみるため」であるなら、分子を売上高とすることに問題がある。

例えば、売上高100、棚卸資産10の場合、棚卸資産回転数は10となるが、本当に棚卸資産が1年間に10回転したとは言えない。何故なら原価率が50%だった場合は5回転、70%なら7回転しかしていないからである。つまり、売上高には粗利益を含んでおり、それを除かなければ正確な回転数は計算できない事を示している。

よって、「棚卸資産回転数=売上原価÷棚卸資産」で計算すべきである。

売上原価を分子とした計算式は、多数の書籍・HPで説明され、多数の企業・研究者も使用している。論理的に考えて、当然の結論と考えられる。しかし、不思議にも売上高を頑強に(または不勉強で)主張する方が多々あって、統一されていないのが現状なのである。

以上

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