意見・異見

 リスクマネジメントの「3つのム」

 

「3つのム」とは「ムリ、ムダ、ムラ」の3つを言います。

    ムリとは、目的より手段が小さい状態

  ムダとは、目的より手段が大きすぎる状態

    ムラとは、ムリとムラが混在している状態をいいます。

   リスクマネジメントは、個人から家庭、企業、自治体など社会の構成員全てを対象とし、かつ、自然災害から経営の失敗や、商品・製品の品質、経済・金融政策などなど、この世にある全てのものにリスクが存在するため、対応すべき分野は極めて広範に及びます。このため、正しい知識がない者がリスクマネジメントの担当になったり、その実施を決定したりと、混乱が多々見られます。

   例えば、津波が来たからといって海岸線に高い壁を作る。どこに来るか? いつ来るか? どの位の高さか? 誰にもわらからず、更に日本の海岸線全てに壁を作れる筈もなく、これは手段が目的より小さい「ムリ」というものです。効果がわからないのに多額のお金を使うという点では「ムダ」とも言えます。

   台風が来るという天気予報だけで翌日の電車を全て止めてしまう。これは過剰反応であり、手段が目的を大幅に上回った「ムダ」というものです。

   東日本大震災の時、たった一つの部品の供給がストップしたために、製造ラインが止まったという会社がありました。不良債権の発生を防止するための得意先管理はよく行っているが、仕入先・外注先や物流の管理は特にしていなかったいう「ムラ」が確認されます。

     これら「3つのム」の存在は、社会資本の大きな浪費となり、大問題と言えます。この問題を解決するには、「正しいリスクの認識と評価、対応の選択」が有効と考えられます。

   そのためには、真摯なリスクマネジメントの研究と正しい教育が必要です。よって、大学や学会の果たす役割は極めて大きいと言えます。

    日本大学のアメフト問題は、リスクマネジメントの基礎である「リスクの評価」と「対応の選択」の誤りが、問題を大きくしたと言えます。リスクマネジメントの学部(危機管理学部)を持つ大学のこの対応は、自らリスクマネジメントの教育を蔑ろにしたと言えます。

    社会は、正しいリスクマネジメントを必要とし、その教育を求めています。大学・学会は社会的使命として、それに応えて欲しいものです。

2018/7/11 高市幸男 

 

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