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新型コロナウイルスによる企業倒産件数の注意点

 

高市幸男(リスク管理研究所)

 

 東京商工リサーチによると、「9月9日17時時点で「新型コロナウイルス」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)は、2月からの累計で全国461件(倒産412件、弁護士一任・準備中49件)に及ぶ」という。

 帝国データバンクを含む信用調査会社から発信される「新型コロナウイルス関連倒産件数」は、数多くのマスコミが取り上げ、毎日のように報道されている。

 倒産件数の発表を見るとき、注意すべき点が3つある

 

①倒産原因統計に「新型コロナウイルス」はない。

 倒産統計における倒産原因の分類は10個あるが、そこに「新型コロナウイルス」はなく、統計上の分類では、「その他」(火災、震災などの偶発的問題が起因)、または「販売不振」(市況悪化による売行不振、消費動向の変化に対応しえない事が起因、他)、他に分類されている。

「新型コロナウイルス関連の経営破たん」として、倒産統計とは別に、トピックとして集計されているのである。

 

②当該企業の関係者が言ったら「新型コロナウイルス関連の経営はたん」となる。

 「原則として、新型コロナ関連の経営破たんは、担当弁護士、当事者から要因の言質が取れたものなどを集計している」とされている。

つまり、「新型コロナウイルス関連の経営破たん」は、例えば「新型コロナウイルスによって売上減少が**%以上あった」とか、「赤字を売上の**%以上計上した」などの明確な基準があるものではなく、感覚的なものである。

 よって、例えば、従業員の感染やクラスターの発生、自粛による営業停止などの直接的原因ではない、消費活動の低迷や市況の悪化による間接的原因の場合、新型コロナウイルスを原因とするか、しないかは微妙な感覚的な言葉の判断となる。

 

③「倒産」と「経営破たん」の違い。

 一般的感覚でいえば、「倒産」イコール「経営破たん」であるが、前述の如く、9月9日17時時点の「経営破たん」は461件で、「倒産」は412件と区別されている。

 つまり、「倒産」は倒産として認識される形態を確認できたものだけを対象とし、弁護士一任や倒産の準備など、事実上倒産ながらまだ倒産形態が確定していない状態にある企業は、「弁護士一任・準備中」として分類、集計されている。

 「経営破たん」は、「倒産」と「弁護士一任・準備中」の合計なのである。

 注意すべきは、累計を計算するとき、各時点の倒産件数はそのまま合算して良いが、「弁護士一任・準備中の件数」は、あくまでもその時点における件数であり、その後「倒産」に移行するため件数が変化することから、合計してはいけないのである。

 

以上

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