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企業間信用の金額認識

2019/2/25 高市幸男

 

   売り手への代金決済を即時に支払うことなく、仕入債務によって支払いを猶予してもらう場合、この猶予期間中は、売り手から資金融通を受けたのと同じになる。これを企業間金融(企業間信用)という。企業間信用は、仕入債務を保有する債務者に対して、売上債権を保有する債権者がいて、初めて成り立つものであり、債権者の与信と債務者の受信が釣り合っているといえる。 

 中小企業にとって企業間信用は非常に重要な資金調達手段であり、金融機関からの資金調達コストが高い中小企業は、金融機関借入から企業間信用にシフトさせる。この結果は金融機関融資と企業間信用の間に代替性があると言われている。そして、その実態は、短期借入金と仕入債務の期末残高及び流動負債に占める割合・推移によって説明される。我が国企業の2016年度末の短期借入金は156兆円、仕入債務は167兆円で、流動負債に占める割合は短期借入金30.8%、仕入債務32.9%となり、ほぼ拮抗している。 

 しかし、短期借入金と仕入債務の期末残高を単純に比較して良いものであろうか? 

 2つの勘定科目には根本的な違いがあり、単純に期末の金額を比較できるものではない。なぜなら、短期借入金は期中借入と期中返済があるにせよ、期末残高をもって資金調達額とすることに大きな間違いはない。しかし、仕入債務は毎月の仕入取引で発生しており、仕入債務の内訳は毎月異なる。よって、期末の仕入債務残高を企業間信用の金額とするのは間違いであり、期中に発生した仕入債務の累計にすべきと考えられるからである。

 販売業の場合、仕入債務の累計額は売上原価と等しくなる。製造業や建設業は、人件費や経費など仕入債務にならない売上原価があるため、売上原価をそのまま仕入債務の累計額にすることはできない。しかし、2016年度の売上原価は1,087兆円にあることから、企業間信用は短期借入金とは比較にならないほど、極めて多額の金額にある事が明白である。

以上

 

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