意見・異見

危ない取引とは

 危ない会社は、商業登記や経営者、経営方針・姿勢、営業活動、取引先、財務活動、決算書など、表面に出ている行動やデータの中に必ずリスク発生の兆候を現わしている。この兆候を見出すことができれば、危ない会社の発見、リスクの回避が可能となる。本稿では、企業であるなら殆どの企業にあると思われる「取引」の中から、「危ない取引」について整理してみる。

 

1、粉飾に利用される取引

①架空取引

実際の商取引ではなく、販売先と仕入先が相談の上、決算や資金繰りのために行う取引。反対取引がセットされるため、決算期をまたぐ粉飾となる。商品の納入や請け負った業務を実施していないのに関わらず、請求書を発行する「架空請求」も含まれる。

②循環取引(環状取引)

2社で行う架空取引は発覚しやすいため、3社以上で行う方法。参加企業の間を商品が循環する。取引の度に利益が乗せられるため、在庫保有者は潜在的な損失を抱える。1社の倒産が全ての参加企業にダメージを与える。

③介入取引

仕入先と販売先の間で取引が決まっているにも関わらず、第三者が間に介入する取引。与信限度・リスク負担回避の利点もあるが、架空・循環取引になりやすい。

④子会社取引・グループ取引

親会社の売上・利益確保または利益隠しのために、子会社やグループ会社に高値販売・安値仕入、または安値販売・不必要な仕入を行う。

⑤仲間取引

同業者の知り合い同士で同じ商品を売り買いする。需給調整・相場安定の機能もあるが、売上・在庫の操作ができ粉飾決算に利用される。

⑥簿外取引

記帳すべき取引を記帳せず決算に反映させない。または、記帳不要の取引を記帳し決算に反映する。粉飾、裏金作りに利用される。

⑦バーター取引  

会社間の話し合いで、商品を購入してもらう際、交換条件として相手の商品を購入する取引。売上確保・利益供与に利用され、架空売上にもなる。

 

2、問題のある販売・仕入取引

①安値販売・値引き販売 

資金繰りを目的とした換金のための投げ売りや、販売先との力関係により強制された値引き販売。取引先名や取引が隠蔽される。発覚した場合信用不安を起こすことがある。

②抱き合わせ販売

販売側の力が強い場合、売れ筋商品と売れ残り商品をセットにして売る方法。不公正取引として摘発されることもある。

③押し込み販売  

ノルマや目標達成を目的に、優越的地位を利用して強引に商品を押し付ける方法。独禁法違反となる。商品を一時的預かってもらい、売上として計上した場合は、売上計上時期をずらす粉飾となる。

④高値(定価)購入

一般的な価格より高い値段での購入や、通常値引き価格で取引されている商品を定価で購入する取引。取引先や外注先との共謀(または強制)によって、実際の取引価格との差額を横領したり、裏金作り、脱税、粉飾決算に利用される。

⑤丸投げ取引(スルー取引)

受注を受けた企業が、その業務を自社で行わず、全て別会社に発注する取引。バックマージンや優越的地位の乱用、脱税、談合の温床となる。

 

3、取引開始経緯に問題のある取引

①異業種間取引

全く違う業種の企業との取引。資金繰りに困って何にでも手を出す、全く関係のない事業への多角化。業績悪化の兆候。

②異商品取引

扱い品が相手先の業種や商品と全く違う分野である取引。資金繰りのためにどんな商品でも扱う。売上・仕入伝票の粉飾、架空取引の疑いもある。

③遠隔地取引

近隣にあるにも関わらず、敢えて遠隔地の企業と取引する。既存の商圏とは全く違う場所にある企業との取引。近隣業者とは取引ができない事情がある。

④紹介取引

友人、知人、親戚等の紹介による取引。取引先拡大のメリットもあるが、与信判断が甘くなる恐れ、循環取引・介入取引に誘われる恐れがある。特に政治家や芸能人など有名人の紹介は要注意。紹介者は何ら責任を負わない。

⑤再開取引

取引中止・停止になっていた企業との取引再開。非公式ルート(社長の一存を含む)は要注意。

2018/4/1 高市幸男

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